南の島のフィニッシングスクール

食の安全も他人まかせ

 「先生、この卵は食べられますか?」と一人の学生が聞いてきたことがあります。今では卵の殻に賞味期限が印刷されたものもありますがその卵にはそれがなかったのです。
 『さて、どう答えようか!』
  私たちの年代の者にはなんでもなく分かっていることが今の若い人たちには分からないことがあるようです。「さぁ、どうでしょうか? どうすれば食べられる卵かどうかわかると思いますか」と逆にたずねてみました。怪訝そうな顔をしています。「割ってみたらどうです?、 割ってみて黄味や白身の形、匂いを見てみたらどうですか」と言うと、なるほどとうなずいていました。
 今ではほとんどの食料品に賞味期限あるいは消費期限が記載されています。私たちはそれを頼りに買い物をするようになってしまいました。おかげで今の若い人たちはちょっとでも期限が過ぎると不安になるようです。
 なんだか変です。食の安全を他人任せにしていることです。学院で学ぶためにアパート暮らしをする学生もおりますが、そのなかにはほとんど家事を手伝った事のない学生もいます。そういう学生は冷蔵庫に残った食材が食べられるのかどうかがわからず、例えば少し熟れすぎてやわらかくなったマンゴやトマト等を食べられるのかどうか一々お母さんに聞いてくるそうです。お母さんはそういう娘を見て「勉強のことではいろいろ気をつけてきたけれど、生活の知恵を伝えること忘れていた」と話しておりました。
 近年、偽装表示や賞味期限改ざんなど私たちの食の安全を脅かす事件が後を絶ちません。しかし、そういう私たち個人では対処できない大きな問題に関心を向けるのに比べて、食中毒の予防を含め極々身近なわが家の台所でやるべき食の安全対策を忘れがちです。食の安全を守るための力、知恵を学生達に伝えなければと思うこの頃です。

                              琉球新報「南風」欄掲載【2010年9月10日(金)】