南の島のフィニッシングスクール

伝統に誇りを

 ある年の夏、札幌のホテルから琉球宮廷料理の賞味会を催したいので札幌まで来てほしいとの依頼を受けました。春には元宮内庁管理部大膳課厨司渡辺誠氏を迎えて日本の宮廷料理賞味会を終え、それに続く企画でした。
  私は伝統の琉球料理を提供するにあたり使う豚肉をどうすべきか迷いました。皮つきの豚肉を食べる習慣のない方々にラフテーを召し上がって頂けるだろうか不安だったのです。思案の末、本物でなければいけないと決め、皮つきの豚肉を用意するように頼みました。
  ホテルに着くと沖縄から送った食材も届き、頼んでいた食材も揃っておりました。ところが4Kg程の豚肉のシートが5枚あり、そのうち2枚は皮つきで残りは皮なしでした。料理長が言うには「皮なしの方は北海道の極上の餌で育てた豚肉で、皮つきは輸入物です」とのこと、言外に皮なしを使ってほしいという気持ちが伝わってきます。そこでまた迷いましたが、やはり本物でなくてはと気を取り直して皮付きの肉を2枚追加するようお願いしました。
  スタッフの方々の働きで気持ちよく準備を整え、いよいよお客様のお迎えです。始めに私が沖縄の食文化について講演し、その後にお食事が続きます。
  心配していたラフテーは好評でした。賞味会終了後、豚肉の皮にこだわった理由をお話しすると、以前に開催したハンガリー料理フェアーでホテル側からのクレームとも思える要望にハンガリーの料理長が「私はあなた方がハンガリー料理を紹介してくれというから、それを作ったのです。これがハンガリー料理です」と応えていたと料理長は話し、伝統として受け継いできた料理に誇りをもち、決して迎合しなかったそのハンガリーの料理長と私の料理に対する姿勢の共通性に感激し「私たちの北海道が誇るべき料理は何でしょうか」と逆に問われてしまいました。

                              琉球新報「南風」欄掲載【2010年7月15日(木)】