南の島のフィニッシングスクール

気迫ある優しさ

どこからどこへ旅をしてきたのでしょうか、帰国した3日後、荷物が帰って来ました。その荷物、学生達に盛大な拍手で迎えられていました

 学院創立10周年を記念して企画したハプスブルグ家とワイナリーを訪ねるツアーでの出来事です。
オペラの観劇やワイナリーを訪ねてワインを楽しむこと、ハプスブルグ家の皇帝列車や星つきレストランでの食事など既存のツアープランにはない豪華な旅行です。
  いよいよ学生達に料理教室の方々が加わり総勢20人の楽しい旅の始まりです。ところが目的地ブタペスト空港に荷物が届いていないのです。学生達には荷物が届かない事もあるので一泊分の着替えは手荷物にするようにと注意していたので動揺はありません。
  翌日、荷物が届いたとの連絡がありました。その日の学生の旅日記に『荷物が届いているとのことで空港までGETしに行きました。全員分あるように見えた荷物の中に八重子先生のだけがありません。でも先生は動じる様子もなく・・。それが今日一番の事件でした』と記されていました。
  その時の私の心境は“私の荷物で本当によかった皆の荷物があるなら大丈夫、楽しい旅ができる”でした。旅行中は参加している方々が私の事を心配してご自分の洋服やパジャマをどうぞと届けて下さったのです。おかげで何不自由なく楽しい旅は続きました。ただオペラ観劇のために用意していた着物がないのを残念には思っていました。そのオペラ観劇の当日、料理教室のSさんが「どうぞ私の着物を着て下さい。きっと学生達が喜びます」絶対に断らせないぞという気迫をこめたその優しさに涙がこぼれてしまいました。
  そして旅日記の最後は『・・ツアーに参加した方々がご自分の洋服、パジャマなどを貸してさしあげていたのです。特にオペラを観に行った日、八重子先生のお着物姿に私は涙がでそうになりました。学院で教えていただいた優しさと思いやりを参加者の方々を通して本当に学んだ感動の旅でした』と結んでいました。
  どこからどこへ旅をしてきたのでしょうか、帰国した3日後、荷物が帰って来ました。その荷物、学生達に盛大な拍手で迎えられていました。

                            琉球新報「南風」欄掲載【2010年10月9日(土)】