南の島のフィニッシングスクール

もてなしの心

客を扱うに貴人と思うて扱え

 西大学院では学生達に各学期の学びの区切りに茶事を催すことを課題として与えています。
 茶事は中立ちという休憩をはさんだ二部構成で成り立っていて、前半は懐石料理とお菓子で、後半はお茶で客をもてなします。客を迎えるには庭を掃き清めて打ち水をし、床の間には墨蹟によるお軸を掛け、季節の花を用意し、旬の野菜や魚を活かした手作りの料理でおもてなしをします。
  しかしながら茶道の経験をつんだ方でもなかなかやることのない一大事です。稽古茶事といえどもお茶を習い始めて4カ月足らずの学生たちには酷なように思われるかもしれません。彼女たち自身も本当にできるのかどうか不安に思ったことでしょう。それでも休日を返上して連日の炎暑の中、掃除や設えをし、お点前の練習や料理お菓子の試作にも励んでいました。
 今年の学生達の茶事に特別な趣向はありませんでした。しかし料理担当の学生はご主人と一緒に北部まで行って釣ってきた魚の中からイラブチャーを使って向付けと焼き物を調理し、ミジュンはから揚げにして八寸に用いていました。一方、茶席担当は垣花ヒ―ジャーまで行って水を汲んできました。茶事の当日には垣花の急な坂の登り降りで膝を痛くしてサポーターをしたり腰痛が出たりして四苦八苦しつつも自ら汗を流した支度で客が楽しんでくれたことに喜びを感じ、また客になった学生も稽古とはいえ自分を心からもてなしてくれたクラスの仲間に感謝の気持ちが湧いたようでした。
 茶事は茶を飲み食事をすること、これは日常茶飯の延長のように見えますが、そこには日本人が歴史の中で洗練してきた“もてなしの心”が取り入れられているのです。茶道では「客を扱うに貴人と思うて扱え」と客を迎える心得を教えていますが、客を身近な家族の一人ひとりに置き換えてみるとどうでしょうか。幸せの風景が見えて来そうですね。

                              琉球新報「南風」欄掲載(2010年7月29日(木))