南の島のフィニッシングスクール

パッションリーダーに聞け

知らなかったことを知り、体得していく喜びが自信につながっていく

■教育の道に入るきっかけは
私は、結婚後、子どもに恵まれなかったことで、主人や義母に申し訳ないという気持ちがずっとありました。40代になって、人は人を育ててこそ成長できるという考えの下、これから母となるであろう女性を育てることが、次第に夢となっていきました。 私は、琉球大学で家政学を学び、民間企業で勤めた後、大学時代の恩師である翁長君代先生の下、調理師専修学校にて務めさせていただきました。こんなエピソードがあります。勤務して1週間、翁長先生へ朝のお茶をお出ししたのですが、お飲みになってくださらなかったのです。その理由は、煎茶のいれ方の基本ができていなかったということでした。茶道を学んでおり、抹茶のいれ方は学んだので、ある程度やっていけるだろうと思っておりましたが、全く違うことを先生に教えていただいたのです。私の新たな社会人生活はここから始まったといっても過言ではありません。若い日に学んだことは、このようにいつまでも原点となって残るものなんですね。不思議なことに、20代の頃体験したことが、40代になって揺り戻しのように還ってきました。知らなかったことを知り、体得していく喜びが自信につながっていくことを次代の方へ伝えていけたらという思いが強くなり、主人へ夢を語ったところ、一緒にやっていこうという心強い言葉が返ってきました。そこから夫婦二人の二人三脚がスタートしたのです。

■教育方針は
近年、女性の社会進出はめざましく、これはとても素晴らしいものですが、このような社会情勢の下、私達は日本ならではの美しい生き方を忘れてしまったのではないかと思います。そこで、西大学院は、良き日本文化の美しい作法を伝えていかなければならないと考えております。さらに、グローバルな世の中に沿うように、国際人としての教養を身につける国際儀礼(プロトコール)も学びます。さらには、心身を育む料理、茶道、自己表現法などを体得させ、豊かな人間性と国際的視野を育んでいこうというものですが、その学びには、核となるべき守るものと、時代の要請に応える新しいものが必要であると考えます。女性を磨くという視点に立ち、カリキュラムを実践致しております。 沖縄に住む私達は、美しい日本の文化と共に、琉球古来の文化を受け継ぎ、そして豊かな自然を享受するという環境にあります。そこで、「沖縄の民族」、「沖縄の自然」、「沖縄の聖地」、など、沖縄に特化した特別講義を設け、沖縄を学ぶ時間をつくっております。沖縄の文化は、廃藩置県、米軍統治、本土復帰などの歴史の渦中で、置き忘れてこられましたが、近年、再び注目されており、とても喜ばしいことです。私達も微力ながら、沖縄県に在る者として力を注いで参りたいと考えます。 学院で学ぶ学生は、将来、母として家庭において子ども達を教育する立場になったり、企業においては後輩を育てる立場になるわけです。彼女達には、幅広い教養を身につけてもらい、豊かな人格と美しい品格をもって、各々の立場でリーダーになっていただきたいと考えています。

■嬉しかったことは
卒業生が企業の秘書など、各分野で活躍していることはうれしいことです。中には学院で講師を勤めている者もおります。また、毎年、入学した学生が、時間を経て成長していく姿を見ることはうれしいことです。料理のカリキュラムの中には、学生に献立を考え作らせるという講義があります。初めの頃は、講師が下ごしらえをして料理を作っていくというスタイルですが、次第に、全行程を学生に料理させるようにしています。卒業時には、フルコースで献立を考え、家族を招待します。自分が作った料理が喜んでもらえたということで自信をつけること、これが卒業の証しにもなるわけです。例年、この時は感動的です。 1年間学んで巣立った卒業生が、折にふれ、遊びに顔を見せてくれたり、母の日に訪ねてくれるなどしてくれます。毎年、娘が増えていくようで、私は幸せだと思います。

■地域教育についてお聞かせください
一度、地域の小学生に茶道を教えたことがあるのですが、とても楽しかったようで「お茶っていい香りがする。また来てもいいですか?」の声がうれしくて、二つ返事で承諾しました。2、3ケ月で飽きると思っていましたら、ずっと訪ねてくるんですね。ある日、今日は忙しいからとお菓子だけ上げたら、帰る背中が寂しそうだったんです。お茶が好きなんですね。そこで、再びお茶を出すことにしましたら、子ども達の間で口コミで広まったらしく、小学生が次々訪ねてくるようになり、今でも続いています。お茶は五感を育むんですね。子ども達が教えてくれました。 お茶と言えば、私どもでは、講義前、朝の時間に、全員でお茶をいただきます。これは、視察で訪れたイギリスのホテル(マナーハウスとよばれる貴族の館)で、出発前に慌ただしくしている私達とは全く異なる空気で、仕事の前、朝のお茶を楽しむイギリス人の姿を目にしたことからなのです。ゆったりとした時間がそこにはありました。帰国後、さっそく取り入れましたところ、私も含め、学生にもゆとりが生まれたように思います。

■今後の夢は
装う=衣、食べる=食、住まう=住、これは生きることの基本ですが、これらを充実させてこそ、豊かな人生になると考えます。よく、「お茶くみしかさせてもらえない」などという女性についての仕事を表現する言葉をお聞きしますが、お茶をおいしくお出しできるということは基本がそなわった素晴らしいことなのです。なぜならば、おいしく召し上がっていただこうと相手を思いやる気持ちから、温度、タイミング、出し方すべてが、お茶を差し上げるということだからです。この姿勢が仕事全体につながっていくのです。このような基本が理解されていくといいですね。 もうひとつ、連綿と続いてきた琉球料理についてその作法について研究し広めていきたいという夢もあります。このような夢が持てたのも、先達である先生方先輩方がいらっしゃったからこそです。家政学に基づいた暮らしの素晴らしさを今後も伝えていきたいと考えます。

◎取材を終えて…
「品格」という言葉がこれほど注目される14年も前から、女性の教育に取り組んでこられた西大先生。時代に合致した、しかも沖縄にマッチしたそのコンセプトは、伝統と先進が混然一体となったオリジナルメソッドとなっています。